大淵笹場について
時代の流れに伴い変わりゆく茶産業。茶処静岡の風景に変化を感じる昨今、継手がなく耕作放棄地となる茶園、消失していく茶畑が増えています。実はこの大淵笹場も例外ではありませんでした。
大淵笹場は、 こうして世間に知られスポットライトを浴びるようになるまでの半世紀以上の間、『たった3軒の農家』の地道な努力によってその景色が保たれていました。
利益や効率を追い求める時代の流れとは距離をおき、喜んでくれる人のために、ただ地道にお茶の栽培を続ける。そんな先人のひたむきな姿勢が、この美しい景色を残してくれたのです。
しかしながら、近年その農家たちも齢八十の半ばをすぎ、寄る年波にはあらがえなくなっていました。 このまま行けば当然、笹場は‥その現状を知り危機感をもった大淵の住人の一部からぽつぽつと「なんとかしなければ」という声が上がり始め、地元有志が集まり、やがて「大淵二丁目ささば景観保存会」が発足することになリます。
その保存会も実は最初は右も左もわからない、手探り状態からのスタ ートでした。 なんとかしなければいけないが 一体何をどう手をつければ良いかわからない、そんな状態からですので足並みを揃えるのさえー苦労。ですが、そんな中でも気持ちだけは皆同じでした。「未来に、子どもたちに、この笹場の風景を残したい」その想いが次第に皆の心をまとめていきます。
ただ単に笹場を保全するだけでは駄目だ。それでは未来へと続かない。笹場にお越しいただいた人に「来て良かったな、この景色を誰かに見せたいな」と感じていただけること、そして 「笹場を好きになっていただくこと」こそを目標にしなければ。そのために私たちは一体何がてきるだろう。皆でそう自問しながら活動の幅を広げていきます。
お茶の木の成長を阻む草をこまめに刈り取り、景色を彩る花々を植え、見晴らしの良い茶の間をこしらえる。 そして茶葉の刈リ取りにおいては効率的な大型機械にたよらず、あえて微細な調整の効く人力と小型機械で行う。そんな試行錯誤の活動を繰り返し、今の笹場の景色が少しづつできあがっていきました。
実のところ、私たちが行うお茶の栽培方法では、決して大量生産はてきません。ですがその代わりに、まるで緑のさざ波が押し寄せているような美しい陰影を刻む茶畑が生まれ、見る人々の目を楽しませていると自負しています。
もしまだ大淵笹場のお茶を飲まれていないようでしたら、ぜひ一度お試しください。正直とても手間のかかる、地道な作業がいっぱいの栽培方法を選びましたが、昔ながらの優しい味のとても美味しいお茶ができるようになりました。目で楽しむ美しい景色と合わせて、茶畑の「風味」もお楽しみいただければ幸いです。
大淵二丁目ささば景観保存会